みんなで走る尾根幹

5月最後の日曜日は、たまライド。年間何度走っているかわからない尾根幹を、この日は参加者と一緒に走る。朝、7時前に家を出て、多摩川を遡上。自分としてはすごく早い時間帯なのに、多摩川には野球をやる人、お散歩している人、かなり人がいる。5月の晴天は、暑くなく、本当に気持ちいい。のんびりサイクリングをしながら、出勤。8時過ぎにたちかわ創造舎に到着。みなさんの到着を待って、スタッフミーティング。9時、予定どおりにスタート。風もなく、おだやかに晴れた多摩川、浅川をクルージング。男性陣の足は揃っていて、一列になって尾根幹をめざす。3日前にも走っているけど、緑が一段と濃くなったみたいに、木陰を作ってくれている。真夏とは大違いだ。ゆるやかなアップ&ダウンを楽しんで、南大沢の長池公園へ。ここは緑が深く、湧水の長池があって、ここが東京の公園とはとても思えない。ここでも、木陰でひと休み。次はジェラートです、とみなさんを喜ばせて、イタリアン・ジェラートのダ・ルチアーノへ。野猿街道にあるこのお店、いつもは通らない場所なので、初入店。開店10分前だったのに、自転車がぞろぞろとやってきたので、お店の人が早目に開店してくれた。みんなで、どのフレーバーを選ぶか、真剣に悩む。どれもおいしそうなので、悩みに悩んで、喉を潤す。ここからは、中央大学脇の激坂、という最後の難関が待ち受けている。最後のギアまで使って登り、そのあとはゆるやかな下り。鳥のさえずりが聞こえる。また浅川まで戻ってきて、新奥多摩街道を経由して、多摩川へ戻ってきた。のんびり走って、休憩もして、3時間。いつもの尾根幹は、武蔵野の美しい景色を湛えていた。

尾根幹コース試走

来週日曜日は、たまライド二度目の尾根幹~高幡不動コース。スタッフ試走に備えて、もう一度コースを走っておかなくては、と他の用事でメッセンジャーしたオーベストのひーちゃんが、夜になって、「一緒に走ってもいい?」と連絡をくれた。おおー、5年前の糸魚川女子チャンプのお申し出をありがたくいただいて、いつも一人で走る尾根幹を、同い年の女ローディが走ることになった。矢野口のローソンで先に待ってくれていたひーちゃんと、四方山話などしつつ、スタート。「ここでインナーに落としちゃだめでしょ」なんて、ご指摘いただきつつ、天気が良すぎるコースを楽しく走った。「初心者には結構、きついね」「そうだよね」なんて、走りながら、昔話なんかもして、試走なのか、サイクリングなのか、やっぱり二人で走れば面白いね、って感じで、このあいだ一人でロケハンしたチクテベーカリーもご案内。この日はお休みということは知っていたんだけど、場所の確認。評判を聞いて初めて来たのに、という小径車の女性もいて、「来週はやってますよ」と、お教えして。途中のファミマで、今年初のカフェフラッペ休憩。しゃべり過ぎて、少々腰が重くなったけど、高幡不動を経由して、ひーちゃんが百草園のジェラートを紹介してくれて、ここでも休憩。沢山のローディが集まっている。今まで、糸魚川でしか会ったことがなかったけど、やっぱり自転車に乗っている仲間は、馴染み方が早い。FBで、駒ヶ根在住の卯月しーちゃんが、「私も八王子にいたのに」と言うので、「だったら一緒に走れたよね。帰省の時は教えてね」と返信しておいた。この三人が同い年。写真はmomotaro cyclingteamのAくんからもらった糸魚川スナップ。

糸魚川への道

今年も無事に完走することができた東京→糸魚川ファストラン・クラシック。走る前は、あまりの練習量の足りなさに、果たして完走できるのか、と不安でしかたなかった。いくら今まで15回走っていても、完走できる保証は、ほんとどこにもなく。前日は一睡もできずに、1時40分。起きる時間だ。おにぎりを無理やり2つ食べて、麦茶で流し込む。真っ暗な道に出るが、今年も寒くない。そして、真っ暗な公園に、いくつものテールライト、ヘッドライトが蠢いている。あまりに暗くて、誰が誰だかわからないが、なんとか受付を済ませて、荷物を預ける。いよいよスタート。風も感じず、寒くもなく、それでもいきなり一人旅となって、後続のグループにくっついて甲州街道へ。ほどなく韮崎、アップ&ダウンを繰り返しながら富士見峠をめざすが、向かい風を感じつつ、2年前の嫌な記憶が甦る。もしかして、ずっと向かい風かも。富士見峠を登り切ると、意外に風を感じずに、フラットペダルの人と諏訪湖へ。エイド前の信号で話すと、初参加とか。「ペダル、間に合わなかったんです」ある意味すごい。岡谷のエイドで、いなり寿司3個とみかんゼリーを食べるが、冷えてないゼリーはあまり美味しくなく。ここから塩尻峠を越えて、松本市街へ行く。まだ8時前なのに、車が多い。それでも、ここから明科までの直線は飛ばせるので、とにかく踏む。木津さん、山下さんのレグルス撮影隊と遭遇、こっちゃんずの柴田くんが死にそうな形相で、そんな4人パックでしばらく行く。塔の原を過ぎて、犀川がダム湖になって、深い緑を湛えている。ヤングがレグルスのワジマンを先頭にした速いパックで追い抜いて行き、木津さんが続く。とても付いていけないので、一人のろのろと第二チェックをめざす。大岡道の駅は、ベーカリーの美味しいパンと、地元のおばさんが作ってくれるいなり寿司、おにぎりが人気。去年は食べなかったので、いくつかパンを食べ、ソバパンはポケットに入れて、出発。長野市街へ入る手前で、ヤングとみのりの宇都木さん、高校生二人が追いついてきて、県庁前まで4人で走る。15歳の土志田くんは去年は長野でリタイア。「今年は最後まで行くんでしょう」「はい、がんばります」と、爽やか。「次のコンビニでガリガリくんだな」と宇都木さんがサポート。ヤングはどんどん行ってしまうので、一人坂中峠を登る。明科あたりから痛み出した右膝が、本格的に痛い。左の腰もだいぶ痛いので、登る度に二ヶ所の痛みがピークになって、止まる。ピエールの車が追い越していく。トンネルまでの九十九折を何度止まったことか。ようやく下りになって、よこ亭を過ぎると、またピエールが今度はビデオ片手に待ち構えていた。カメラの前では涼しい顔で通り過ぎると、「ゆきえちゃん、好き~!」と言うので、「ありがと~」と手を振る。もうすぐ第三チェック。エイドではヤングがコーラを飲んでいた。ここではいつもはちみつレモンをボトルにしっかりと入れ、これを飲みつつ、ラストまで行く。ヤングが先行し、FIGの山嵜くんにリタイアの様子なんかを聞いて、出発。妙高の下りはまたまた向かい風。踏んでも踏んでも、スピードが出ない。それでも一人で踏んでいると、遠くのジャージが段々近づいてくる。下りなのに、なんでこんなに遅いのか。すると、ヤング。へばっている時のヤングは追い抜くときに声を掛けても無反応。私の後ろに付くので、「ゆっくり来たほうがいいよ。危ないから」と言っても、付いてくる。新井の乙吉を左折し、風はいよいよ真向い風。疲れてきたところで、ヤングが前へ。それでも引くというよりは、ただ前へ行って、どんどん先行する。なんだか向かい風にめげそうだったので、ポケットに入っていたミニ大福を最初に3つ、次の信号で2つ食べる。最後の8号の海岸線に出ると、大福パワーで、追い風もあって、ガンガン踏めた。再び私が前に出て、スピードアップしたものの、肩が痛くて後ろを振り向けない。なので、後ろを気にせず、そのまま40km単独走。最後の左折の信号は、前のじょんのびたいむの人の通りに曲がったら、そこは一つ手前。三人で道に戻って、ゴールまで。あーあ、やっと着いた。12時間47分、前年より26分も短縮できたのに、全体順位、女子順位は後退。しかも、めちゃめちゃ疲れてる。部屋に戻り、7時半に爆睡。

土山峠橋

連休最終日も土山峠。今年は服部牧場は行かず、ひたすら宮ヶ瀬湖詣で。いつ来ても、きれいです。この日はさすがにローディも多く、東なんとか橋では、車との接触事故らしく、警察の人が自転車の写真を撮っていた。それにしても、少しは楽になるかと思った土山峠も、連休最初に登った時と辛さは同じ。本当に腰が痛い。それが、長い。汗もすごい。どこまでもエメラルドグリーンな湖に癒されつつ、虹の大橋からのダウンヒルを楽しむ。ここまで来れば、あとは町田街道。それでも、連休で一番暑かったこの日は大蔵のファミリーマートで今年初のカフェフラッペ。ゼリーコーナーに美味しそうなみかんゼリーがあったので、これも食べる。濃い!大満足!と書いてあって、おそらく来週、岡谷のファミマエイドで食べることになるのだと思ったけど、そのシミュレーションも兼ねて食べてみた。大満足だった。去年は大雨の中で無理やり食べたけど、今年は美味しく食べられそうだ。やっとたどり着いてテレビを点けると、周平離脱の中日はこの日も大量加点で勝っていた。でも、去年も5月は首位だったような。シーズンはまだ長い。連休中の走行距離、550km。

春の宮ヶ瀬湖

飛び石の三連休初日は、これまた土山峠まで走った。いつも国道246号は激混みだが、今年は町田を過ぎても渋滞は続き、なんと妻田までびっしりだった。ここを右折して、清川村をめざすが、山に入って、やっと車が少なくなった。お腹空いたなぁ、とコンビニをめざすが、最後のセブンイレブンもローディがたむろしているのでパスし、登坂区間に入る。46kmから6kmくらいはひたすらに登り。前々日の峠走りで腰が痛く、伸ばしつつなんとか登る。虹の大橋を過ぎると、しばらくは気持ちのいい下り。半原はいつまでも登りがあるが、土山峠さえ登ってしまえば、このコースは下りが長い。車の渋滞の影響で、ここへ来るまで随分時間がかかってしまい、とっくに昼を過ぎている。どこでお昼を食べようか、考えながら走っていたが、結局、大蔵のサイゼリアで休憩。隣は国士舘の体育会の男の子二人。そこの並びに母親くらいの女ローディが。ピザとドリアという二人前コースをたっぷり食べて、エネルギー補給。ここからは25kmくらい。ゆっくりと走り、家に着いたのは4時少し前。長かった。翌日は、家を出たものの、強風のためUターンし、子供の日は尾根幹から野猿峠の80km、ここまでで444km。ゾロ目が縁起いいのか、悪いのか。それにしても、宮ヶ瀬湖のきれいなこと。これが都心から50kmにあるとは、みんな知らないだろうな。

初土山峠

実に一ヶ月半ぶりの更新。随分と過酷な4月だった。気がつけば、世の中はGWになっていた。それにしても、天気は4月からあまり良くない。気持ちのいい春の陽射は、今年は少ない気がする。緑の日、勢いこんで走り始めたものの、あまりの強風に土山峠は断念し、尾根幹をゆく。それでも、多摩川にまで波が立つほど風は強く、立ち止まること数回。やっと多摩川原橋。このまま連光寺へ行くと、ずっと横風なので、左折して、尾根幹で南大沢まで。まだまだ風は強いので、月末に行うツーリングの下調べに切り替え、チクテベーカリーをめざす。ナビでは二ヶ所が出て、よく見えないので、最初に出た店をめざすが、ここは自宅の一角で、元のお店のよう。南大沢の団地にある店をめざすと、ここは最初にナビを立ち上げたあたりであった。すごい遠回り。行くと、古びた団地の端に突如、行列が。対面販売なので時間がかかり、しかも前の人は5000円分も買っていて、並ぶこと20分、ようやくリュスティックを2つ買い、ポケットに突っ込む。天然酵母がブームなのか、そんなに安くないパンをうれしそうに買っていく人たち。材料原価は1/10もしないだろう。大蔵のファミリーマートでコロッケとコーヒーと買ってランチ。帰りも風は止むことなく、しかも追い風にもならないで5時間もかかって、65km。日曜日、この日もさして温かくはないものの、アームカバーだけして246号へ。今年初めての土山峠。暑くはないけど、汗がボタボタと落ちる。九十九折は、毎年走っていても、こんなに長かったかと思う。腰が痛い。ようやく峠が終わり、見渡す宮ヶ瀬湖は、天国のようにきれいだ。行ったことないけど。車もいないし、人もいない。時折、対向から自転車が来るだけ。いつもながらの静寂の湖面。爽快なダウンヒルを楽しんで、駐車場待ちしているビジターセンターを過ぎると虹の大橋。新しくできた相模原インターの看板を右折して、相模川を渡り、橋本に出る。帰りの世田谷通りは3人のトレインだったので、かなり回して走れた。もう糸魚川まで2週間というのに、やっと初100km。

白木蓮

土曜日は冬に逆戻りのように寒く、日曜日もまた寒かった。ランニングも真冬バージョンで、グローブまでして出発。梅はほとんど終わってしまったが、桃が咲き出し、モクレンの花が満開。陽気は春ではないけれど、草花は春の準備を始めている。そういえば、柳原白蓮は「びゃくれん」と読ませる。白い花の木蓮は、「はくもくれん」で、印象がだいぶ違う。それでも、モクレンの花は好きだ。大学生までいた祖父の家には、庭に木蓮の花があった。よく見る紫の花で、こちらは紫木蓮(しもくれん)というらしい。同じ花なのに、紫と白では、違う花のように趣が違ってくる。白の木蓮は気高い。紫は優美。今日も調子は悪くなく、快調に走ったつもりだったが、後半の1時間はLife logはカウントしていなかった。2時間14分のラン。

梅見月

旧暦二月は梅見月というらしい。新暦では2月下旬から4月上旬、まさに今の時期。そして、遊歩道の梅が真っ盛りで、走っていても梅の香りがあちこちでする。そして、土曜日は啓蟄に合わせたかのように温かくなって、6日も汗ばむほどの陽気になった。曇り空のなか、いつものように烏山川緑道~目黒川沿いを走る。この日、びわ湖毎日マラソンがあったが、正午の気温19℃の高温のレース、と実況がさかんに言っていた。寒い真冬の時期に走っていたことを思うと、手袋のいらないこの時期が待ち遠しかった。新しいXperiaには、SONYのLifelogというアプリがプリインストールされていて、まさにタイトルどおり、その人の生活がどうなっているかを記録してくれる。目標設定の数値を入れておくと、夜になって達成したかどうかも知らせてくれる、いわばちょっとおせっかいなアプリ。使い方もよくわからずにほおっておいたら、ある日「達成しました!」というお知らせと共に、その日の記録が更新されていた。自転車を1時間と設定したら、往復の自転車通勤で達成されていて、ランも1時間としたら、夜走った距離、ペースまでが入っていた。何時から何時まで車に乗ったかも記録されていたし、GPSで記録しているのか、ON/OFFを自分でセットすることはないのに、スマホには知られてしまっている。アリバイに使えるのかも。それでも、正確でない時もあって、昨日は2時間10分走ったのに、そのうち30分はWalkingになっていた。1km6分を切ると、このアプリは歩きとみなすのか、そんなに手厳しいのか。やっぱり機械には間違いもある。土曜日の車も帰りだけカウントされて、行きはカウントされていないし。人工知能がまだ進んでいないのも、なんだか納得。自動運転も、そうそう進歩はしないらしいし。時期が来て、自然と咲いている梅のほうが、よほど素晴らしい。

ストライダー

真冬の大嵐となった土曜日とは打って変わって、晴天となった日曜日。いつもの烏山川緑道~目黒川沿いのランに出かける。まだまだ春とはいえない風景ながら、気温が高かったので、汗の出方がすごかった。いつものように、深夜放送のラジオ録音を聞きながら、とトコトコ進むと、大橋の手前でストライダーの男の子発見、一緒に走るお父さんはラッパーみたいなBMXライダー。あんまりかわいいので、撮影しようとスマホをポケットから出そうとするが手間取り、そのうちに路地に曲がってしまい、やっとのことでおさめたのがこのショット。ストライダーでも、きちんとかぶっているヘルメットもまたかわいい。この先から目黒川に入り、人混みを抜けると、だんだん風が強くなってきた。日蔭は寒い。西五反田まで往復して、2時間半。夕方はジムで筋トレ。明けて、火曜日。いつものように自転車出勤して、最後の曲がり角を曲がろうとしたとき、後ろからやってきたキャデラックにぶつけられ、転倒こそしなかったものの、左膝を自転車のトップチューブにぶつけ、右足は車のタイヤに強く接触。右足のズボンとバイクシューズは真っ黒。慌てて降りてきたキャデラックのドライバーは平身低頭だったが、病院に行ったり、加害者に電話をしたりと、この日はさんざん。打撲の膝は、どんどん痛くなった。左に停まっていたパトカーに気を取られてよそ見、というけど、転倒していればもっと怪我はしていたはずで、車の運転は気をつけてほしいもの。

火花

記録的な暖冬と言われるこの冬も、年明けになって、普通の冬の寒さに達しつつある。夜の外気温が8℃を下回ると、さすがに外ランに行くのも躊躇する。先週は祭日の昼間に走ったほかは、夜ランは2回ともトレッドミル。二度目の木曜日は、BS3で「英雄たちの選択」を見ながら8km走った。ちょうどこの日は、真田信繁の回だったので、大阪夏の陣での信繁の選択が、この日のテーマだった。大河ドラマ「真田丸」も始まって、仕事始めの日には、半年前に渋谷区図書館に予約しておいた「火花」の順番がまわってくるという吉報まであった。カードを持って図書館に行くと、エプロンをした係の女性が、私の顔を見てニコッと笑い、「すごいですね」と言った。壁の張り紙には、「火花」の予約待ち人数は1131人とある。「なんで、こんなに早く来たんですかね」と聞くと、さぁー、と首を傾げて書庫の本を取りに行った。2年前くらいから、受賞作品となった新刊本を買うのをやめている。本屋大賞を取った「海賊とよばれた男」を上下巻買ってみたものの、さっぱり面白くなく、読み終わった途端に、図書館に持ち込んで寄贈したのがきっかけだった。その時も、この本の予約待ち人数は600人を越えていたと思う。受賞作品を疑ってかかるようになったのは、この本がきっかけだった。読んでいるうちに面白くなるはずだ、と信じて読み進めて、最後までまったく面白くなかったという本も、この時が初めてだった。「火花」は芥川賞受賞の前に予約したのだったか、こんなに早く順番が来るとは、今年は春から縁起がいい。実際の本は思ったよりも薄く、2日で読み終わった。「大地を震わす和太鼓の律動に、甲高く鋭い笛の音が重なり響いていた。‥‥」小説っぽい書き出しに、一気に期待が持てたのもつかの間、主人公徳永と、心酔する先輩神谷の何年かの話は、一つも心を揺さぶられずに終わってしまった。そういえば、このところの芥川賞受賞作を最後まで読み終えた記憶がない。人物への興味もわかず、ストーリーを追うワクワク感もない。そういう意味では、最後まで読んだのはまだましなほうなのかもしれないが。「世界の中心で愛を叫ぶ」がヒットした時、普段は本を読まない世代が買ったからだ、と言われた。今回もそんな気がする。