雨の304km

一年前、あれだけ寒い向かい風の難レースだったので、今年は走りやすいのかなぁ、なんて天気予報もいいように解釈していたのに。これまで14回の参加で、もっとも過酷な300kmになろうとは。この時期、大相撲夏場所が行われていて、去年部屋で見たのは、ドヤ顔の稀勢の里の顔だったが、今年は逸ノ城が4敗目を喫した一番を見た頃、全員がホテルに集まった。明日の今頃は、もう部屋に着いているんだね、なんて不安まじりの顔で言う。何度走っていても、今年も走れる保証はどこにもない。食事を済ませ、夜10時に就寝。今年はめずらしく、たっぷり4時間眠れた。支度をして外に出ると、あれ寒くない。スタート地点では、一年ぶりの顔、顔、顔。もろもろ挨拶を済ませて、スタートを待つ。3人で3時半に出るが、25km地点まで、この3人のパックで走った。甲州街道合流の手前で、7分前に出走した絹ちゃんに追いつく。5時過ぎから雨、しかもどんどんひどくなる。時折、今年はチームサポートにまわった伊東くん、浜中くんの車がやってきては応援してくれる。第1CPは7時到着。雨は土砂降りで、エイドでもらったゼリーをコンビニの軒先でほおばっていた。すると、伊東くんが自分のパーカを持ってきてくれて、「着たほうがいいよ」と渡してくれた。ここでカッパを買っている人も多かった。雨は昼まで降っているとのこと。昼まで、あと5時間もある。塔の原を直進して、しばらく川沿いを直進、このあたりで坂バカトレインの後ろに付いて連れて行ってもらう。第2CP大岡エイド到着、トレインの中にいた金子宏樹が「やっぱり、ゆきえさんだ。走り方見て、そうかと思った」なんて言うので、「わかったなら、声掛けてよ」と二人でいなり寿司つまみながら話す。ここからは、飯綱高原の山岳区間。またまた絹ちゃんと二人で走り、激坂は選ばずに、正規ルートへ。フルーツラインに入ると、また一人旅。去年は伊東くんと登った飯綱高原、やはり長い。第3CP手前で、また絹ちゃんが追いついてきて、二人でエイド到着。ようやく雨があがったと思ったのもつかの間、ここから濃い霧に悩まされる。視界5mほどで、対向車のライトがやっと見えるくらい。それでも、去年飛ばした下り坂を、気をつけて踏んでいく。車道の割れ目にはまりそうでこわい。しかも、雨がまた降ってきて、相当寒い。手足がかじかんで、痺れてきた。8号線の海岸線に出ると、それでもまだ50km近くある。しかも、妙高の下りから、ずっと一人。この海岸線が、一人では相当堪えた。どんどんスピードが遅くなる。腰が痛く、何か食べたいけど、止まるのもいやだ。トップチューブのバッグに入ってるパンさえも取れない。残り、30km。ヘロヘロになって走っていたら、まるでスーパーマンのように、後方から男性二人を引き連れた絹ちゃんが、まさに「付いておいで」と言わんばかりにやってきた。4人のトレインで、前方のアスペンのお兄さん一人を巻き込んで、5人でまわす。私はまったく前には出られず、付いていくだけ。148号への曲がり角までが長かった。ようやく、左折。「結局、最後まで雨でしたね」と私の後方の人が言う。私は伊東くんのパーカを210km着たままだった。何度も、いろいろな人のトレインに混ぜてもらい、伊東くんにもパーカを借りて、絹ちゃんにも引いてもらって、ようやくたどり着いたゴール。もう漕がなくていいのはうれしかったけど、とにかく全身が痛かった。13時間13分は、奇しくも去年と同タイム。