久しぶりの角田光代。彼女、というタイトルでは直木賞をとった「対岸の彼女」があった。あの専業主婦の主人公より、今回は著者に近いのか、主人公の成長(堕落?)ぶりが、妙にリアルだった。少し様子のいい彼氏との、彼の言うままに寄り添って、精いっぱい付いていく大学時代。その大学時代に、すでにクリエイターとして一時、売れっ子となっていく彼と、その言動に左右され、生き方を模索していく和歌。やがて、彼女が作家となって売れていくと、同棲を始めるものの、それを認めたくない、スタイルを変えない仙太郎。その二人の関係性の中に、母、祖母の人生を絡めながら、やがて自分の人生も暗中模索していく。「対岸の彼女」より、「八日目の蝉」より、主人公の生き様が辛く、身に迫ってくる。作家という仕事を続けていく苦しさ、好きな男との生活、肉親との関係、それは同時に保持しようとすればするほど、どんどんバランスを欠いていく。そして、祖母の人生を知れば知るほど、自分と重なりあって、そして苦しくなってくる。それでも、この主人公は、最後には小さな糸口をみつけていく。希望の光をみつけて、終わっている。ここに救いがある。